開院3周年を迎えて
10月で何とかクリニックも3周年を迎えることができました。これもひとえに皆様のご協力・ ご支援のおかげと、スタッフ一同感謝しております。
この夏に開設前からクリニックの理念に賛同していただき、ホームページの管理を始め多大な ご尽力をいただいたSDさんが永眠されました。
病魔に侵されながらも精神医療の発展を夢見ていた彼の志を受け継いで、私どものクリニック もさらに一歩づつ成長していきたいと思っています。心よりSDさんのご冥福をお祈りいたします。
3年前に還暦を迎え、現役余命の限り今までのご恩返しとして"多様なニーズに応え得る"
クリニックから地域精神医療を展開しようと決心しました。
始めたばかりの新参者ですが、充実した日々を送らせていただいています。遅すぎる起業ですが、むしろ躊躇していたらきっともっと後悔していただろうと考えております。
クリニックが目指してきた地域に根ざした当事者・家族のニーズに応えた医療・福祉システム
の構築は、行政・福祉事務所・保健師・福祉施設・生活支援センター・グループホームなどとの
連携で前進しています。最近、日本の各地でも取り組みが始まったACT(アクト)*ですが、私たち
の活動と同じベクトルであると考え「ACT全国ネットワーク」に入会いたしました。
小規模精神科デイケアをはじめ、家族・福祉相談や訪問看護・心理カウンセリングなどある程度は何とか形になってきましたが、まだまだ不充分だと思っています。
あくまでも当事者や関係者の「生活している場」での支援のスキルを磨いて、各関係機関と連携を深めて、ACTをめざしていけるよう考えていますので、なお一層のご支援・ご鞭撻をお願い申し上げます。
2010年11月 駒形メンタルクリニック 院長 佐藤恒夫
*ACT(包括的地域生活支援プログラム)*
ACT(Assertive Community Treatment)は、1970年代のアメリカで始まって日本に導入された多職種の専門家による様々なサービスを直接提供するオーダーメイドのサービス体制です。
ACT(包括的地域生活支援プログラム)については、後日詳しく説明するつもりですので、ここでは簡単に触れておきます。
佐藤院長のコラム
- 精神科小規模デイケア(登録50:DC+SC=12人平均/日)の充実。
- 速やかな初診対応。(週14→10人・1〜2週間以内)
- 必要に応じた訪問看護・往診(2〜3例/週)。
- 待ち時間の短縮(予約制・電子カルテ・院外処方)
- 福祉・家族相談(医療福祉相談室完備・PSW対応)
- カウンセリング(CP3名で医師診察延長上)の充実。
- 症例検討会(病診・地域・福祉機関と連携)
- 自助団体・家族会の育成(DCでのグループ・EA例会)
- 専門スタッフによるチーム医療。
- 福祉との連携。
1.精神科小規模デイケア(登録50:DC+SC=13人/日)
メンタルクリニックを始めるに当たって、最初に考えたことは、地域に需要がありながら一向に充足されない精神科デイケアの開設がありました。開設してますます精神科DCの重要性を痛感しています。
県内にメンタルクリニックは40以上あります。デイケア併設のクリニックは当院が6か所目でその後もほとんど増えていません。
(昨年舘林にリワーク専門DCが開設されたり、高崎の中泉MCがDCを開設されるとうかがっています。)
デイケア機能を持ったメンタルクリニックが、もっと地域に増えるといいなと実感しています。
30年間、厩橋病院と三枚橋病院の勤務医でしたので、長期在院者中心のDCの重要性は分っておりましたが、しかし、精神病院とは殆ど無縁な若い当事者などを地域で支えるDCの治療的有効性も計り知れないものが
ある事を知り、その需要の高さに驚きました。
当クリニックには、学校や職場から遠ざかって、家に引きこもって家族と膠着状態になっている方々も様々な目標を持って通われて、DCを通過点として巣立っていかれました。
充分なケアをするために、通所の方は待機していただくこともありますが、見学はできますので、ご連絡の上来院してみて下さい。
2月からはプログラムも見直して、充実した活動の場づくり、なじみの関係づくりを目指していくつもりですのでご期待下さい。(詳しくはデイケア活動報告を参照してください。)
2.速やかな初診対応。(週14→10人・1〜2週間以内)
群馬県には20の精神病院、17の一般病院の外来、38のクリニックがあります。(県立こころの健康センター資料参照)各医療機関によって初診時の取り扱いは異なるのでお確かめ下さい。
ご承知のようにどちらのメンタルクリニックも初診予約が一杯で、中には2〜3カ月先でないと受けられないクリニックもあります。
当院では木曜を除いて、週4日で10枠(各1時間計10時間)を初診診察の時間にあてています。
今のところ曜日時間指定がなければ、遅くても1〜2週間以内に予約できるようにしています。
入院治療が必要と思われるケースなどは、メンタルクリニックではなく、直接,入院可能な精神病院の外来に行かられた方がよいかも知れません。
また、夜間・休日についての緊急を要する場合などは群馬県内の精神病院の当番医制になっていますので、詳しくは県の精神科救急情報センターにお問い合わせ下さい。
さる3/7に太田市福祉会館で群馬県精神神経科診療所協会主催の大熊先生の「世界は今、地域精神保健サービスの時代」というテーマの講演はとても分りやすく感銘的でした。
ジャーナリストの大熊一夫氏著「精神病院を捨てたイタリア、捨てない日本」(岩波書店)で詳しく書かれていますので、興味のある方は是非お読みになって下さい。
日本の精神医療行政が、精神科受診者を隔離収容中心であることは、かなり各国から指摘されているところですが既に病床削減したイタリアをはじめ欧米での病院から地域医療への移行のシステム作りに比べ、日本は余りにも遅れている事が分ります。 (下表参照=大熊氏著書の資料より)
3.必要に応じた訪問看護・往診(2〜3例/週)。
ご存じのように、4月から医療費が改訂されました。
メンタルクリニックにとっては、再診料の引き下げに加えて通院精神療法が30分以下は切り下げとなり、厳しい経営を余儀なくされています。
病院中心から地域移行(退院促進)を叫んでいる割には、地域医療の評価が下がるのは納得いかない所です。
現在、当クリニックでは、精神保健福祉士や看護師による訪問看護を月2〜4回行っています。
6月からは訪問可能な看護師も増員し、訪問の需要にお応えできるよう準備しています。
当事者の生活している家庭に行かせてもらって、医学的な注意や指導を行ったり、生活上の相談、家族調整などを行います。もちろん、治療的に必要で、当事者やご家族が同意されている場合に限ります。
診察室だけでは分らないこと、できないことができ、とても役に立っていると思っています。
医師の往診は、今回の改定で評価が上がりましたが、なかなか時間がとれず、難しくなっています。
昨年の当クリニック受診者の診療圏は以下の通りですが、訪問看護は当院通院中の方で片道30分以内の方に限らせていただいています。
4.待ち時間の短縮(予約制・電子カルテ・院外処方)
当院も他院同様、利用者の待ち時間を短縮し、{予約→受付→診察→会計→処方}の流れを円滑に合理的にするためにいろいろな工夫を重ねています。待合室も広く明るく疲れない環境を考慮しています。
まず、「予約制」です。
当院では、初診も再診も「予約制」をとっております。これは診療時間を初診60分、再診10分以上を目標に円滑に診療が進むように考えています。もちろん、急患や入院を含め家族などに対する面接時間は、時間内で済ますことができず延長となり、やむを得ず予約時間を過ぎる事もありますが、ご勘弁させていただいています。
待てない方は受付に申し出ていただいて対応しています。
時には、1時間以上待っていただき、予約制の意味はないと御叱りを受けますが、精一杯努力した結果ですのでご了承ください。
初診予約については、?「速やかな初診対応」をご参照ください。
次には、「電子カルテ」です。
当院には紙カルテはなく、すべて電子カルテになっておりますので、カルテの移動や出し入れはなく、診察終了すると確認作業の時間はありますが、ほぼ瞬時に、会計(領収書・明細書発行など)も出るようになっています。
次回の予約と予約表の発行や院外処方箋発行は診察中に行っています。
医師の稚拙な入力ミスや処方内容の再確認などに要する時間をもっと短縮出来ればと思っております。
最後の薬剤提供は、「院外処方箋」に基づき、お望みの調剤薬局で受けていただいています。
近接の調剤薬局には車などを移動することなく、「院外処方箋」を持って歩いて行って薬を受け取ることも可能です。
また、待ち時間を有効に過ごしていただけるよう、雑誌や新聞3紙や「まちあいライブラリー」(前回?参照)の開設、コーヒー・冷水などの提供もさせていただいています。
室内の空気が合わない方は自動車で待っていただいていたり、「室外喫煙コーナー」に出て庭に下りて山野草などの草花や、デイケアメンバーが作った農作物などを観賞することもできます。
もちろん、テラスや藤棚の下で椅子に座ってゆっくり喫煙する方もいらっしゃいます。
また、充分余裕を持って作ったつもりでしたが、将来的には駐車スペースの拡張も必要と考えております。
5.福祉・家族相談(医療福祉相談室完備・PSW対応)
当院のサービスの一環として、精神保健福祉士による医療福祉相談を行っております。
医師には言えないことや、福祉的な相談など医療関連の当事者や御家族の悩みや相談を 受け止め適切な情報提供や支援を行っておりなかなか好評です。
完全予約制で一部有料になりますが活用していただいています。
詳細はHP医療相談室の紹介を参照してください。以下のような内容の相談を想定していました。
- ・福祉制度(自立支援、障害者手帳、障害者年金等)についての相談
- ・精神障害者の住居、就労等についての福祉的な施設の紹介
- ・症状、生活のしづらさについての相談
- ・不登校、引きこもり、摂食障害など思春期に関する相談
- ・親子関係、DV(ドメスティック・バイオレンス)等、家庭に関する相談
- ・その他アルコールや薬物依存等、依存に関する相談
- ・自助グループの紹介等
医療福祉相談の実際の最近1年間の傾向を集計してみたのが下のグラフです。
最近の相談内容を分析すると、次の図表のようになりました。(複数項目加算)
当クリニックの特色である精神科デイケア・訪問看護・心理カウンセリングに対する相談が全体の38%ありました。
(DC=22%,訪看=9%、心理C=7%)中でも、目玉の一つのデイケアに対する相談が一番多かったようです。
他にも、家族支援(10%)、就労・復職支援(10%)、経済・福祉制度(20%)などの相談が多かったようです。
中には、PSWの定期面談が続いているケースもあります。
なお、相談室には「まちあいライフラリー」以外の分りやすいDVDや本も用意されており、DVDの視聴も可能に
なっておりますのでもっと利用していただきたいと思っています。